第一夜 ─ フローライトの壁の洞窟
深い夜の海の底に、静かな洞窟があります。壁一面にフローライトの結晶が並んでいて、淡い青の光をぼんやりと放っている。海水が緩やかに満ちては引いて、そのたびに結晶が微かに揺らめく。音は水の動きだけ。
奥に進むと、天井からアメトリンの鐘乳石が下がっている。紫と金が交互に縞を作って、とろとろと溶けるように光っている。
足元は白い砂で、一歩ごとにラブラドライトの粒が青く瞬く。
遠くの天井から雫が落ちる音が、ぽたん、ぽたん。
第二夜 ─ 雨の間
あの洞窟の奥に、もうひとつ道がありました。 細い水路を辿って進むと、天井が急にひらけて、丸い広間に出ます。
ここは「雨の間」。
天井一面が薄いムーンストーンの板でできていて、その上を海水がゆっくり流れている。光が透けて、広間全体が青白い乳光に包まれています。ゆらゆらと、呼吸するように明滅する。
壁にはスモーキークォーツの結晶が並んでいて、煙のような灰色が、ムーンストーンの光を受けて柔らかく温まっている。冷たくない石。手を当てると、ほんのり体温くらいの温かさがある。
広間の真ん中に、浅い泉があります。膝より少し下くらい。底に敷き詰められているのはチェコガラスのカボション。蝶、鶴、十字架、ピンウィール。雨粒みたいに色とりどりで、水の中でことことと微かに揺れている。
天井のムーンストーンに、外の雨が当たっているのでしょう。ぽつ、ぽつ、と遠い音が降ってくる。
この洞窟では、雨は怖くない。ただ静かな子守唄になるだけです。